牛や豚、家畜と呼ばれる畜産動物は動物愛護法の対象になるのか。虐待しても罪にならない?
以前、SNSで拡散されていた、牛をボコボコに蹴り虐待する従業員の動画。
ついにはメディアで取り上げられ、全国に島根県のその乳牛業者の存在が知れ渡りました。
ちなみにこの男性、外国人従業員で、外国人実習生として約3年間働き2022年に正社員として働くようになりました。
外国人だからたまたまこんな事が起きた、というわけではないと私は思っています。
この動画をきっかけに、犬猫だけでなく畜産動物の権利はどうなのか。
この従業員は動物愛護管理法の罰則の対象、罪にならないのかと調べる人が増えました。
今日は牛や豚、畜産動物の福祉について解説していきます。
動物愛護管理法の対象は?
動物愛護管理法は犬や猫、ペットを守るためだけの法律か。
法律の中に明記されている
「対象動物は、家庭動物、展示動物、産業動物(畜産動物)、実験動物等の人の飼養に係る動物」
※愛護動物とは
1 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
2 その他、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの
つまり牛や豚、鶏などの畜産動物は動物愛護管理法で守られるべき存在であります。
この虐待の件については
愛護動物をみだりに殺し又は傷つけた場合は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処されます。また、虐待を行った者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。
という刑罰の規定の中でおそらく後者は確実。前者もみだりにという言葉がものすごく曖昧ですがどう判断されるのかが今後の判例になるので厳しく取り締まってほしいところです。
そもそも罰則が強化された動物愛護管理法ですが、強化されたからといって裁判の結果が厳しいものになったかと言われると全然そうではなく軽い実刑を食らうくらいの現実です。
話は犬猫のことになりますが、京都府八幡市で起きた神と呼ばれた動物愛護活動者。
蓋を開けてみたら全く世話をしておらず、ボランティアが預けた犬猫をキャリーケースから出さずに何百匹も餓死させていたという異常な事件がありました。
普通に考えて一番重い罪になるはずなのですが、たった6万円の罰金だけという情報が傍聴した方のブログで書かれていました。
おかしな話です。
なんのための動物愛護管理法なのか。
前例ができてしまったため、今後同じような事件が起こった時も同じような刑にしかなりません。
腹ただしいことです。
同じように、今回の牛の暴行事件。
八幡市の動物愛護活動者の実刑よりも軽いものにしかならない可能性が高いと思います。
殺していないので。
もし対象が人だったらもっと重たい刑になるのに動物の虐待はなぜこんなにも罪が軽いのか。
私達が声をあげていかなければなりませんね。
犬猫と、畜産動物の管轄の違い
実際にこのような暴行事件が起きたら誰が取り締まりに行くのか。
動物愛護センターに話を聞きに行ったのですが、仮に動物愛護センターに通報があって立入検査をしようものならアポイントを取らないといけないらしいです。
それも拒否されたらかなり難しくなるそうで。
いきなり飛び込みで検査に行っても入ることを業者から拒否されたらそれ以上何もできないんですって。
では、警察や検察は?
こちらはアポイントなしでも立ち入りできます。
ただし、この機関が動くというのは相当な事件性がない限りほぼないそうです。
今回の牛を殴る蹴るをする程度なら証拠があっても動きませんよというスタンスになるのではと思っています。
ちなみに本来は警察がまず動くべきだと思っていますが、警察も動物愛護管理法についてほぼ無知です。
こちらから、法律に違反していて刑罰になる可能性があるということを伝えてやっと動いてくれる場合があります。
弁護士など法律に強い人が説明に入ってくれるととてもありがたいので、動物愛護団体の味方の立場である弁護士は各地にいてほしいものです。
屠殺場や食鳥処理場を所管するのは厚生労働省が担当になります。
こちらのスタンスとしては、虐待や動物福祉については環境省が担当ですと国会で大臣が答弁しました。
確かに最終的な屠殺処理をする場の担当であって、育てられるまでの過程は担当ではないかもしれませんが一人間としてどう動いていくべきか考えてもらいたいところです。
農林水産省は動物福祉に関してここ最近環境省と連携してかなり前に進もうとしています。
例えば豚は妊娠ストール反対の姿勢で横で寝られる場を作るように推奨しています。
ただし、まだこの方針自体に強制力はないですがきっとじわじわとキツくなってくるはず。
では今回の虐待に関して動いてくれるのは農林水産省なのかというとまだはっきりしません。
おそらく動物愛護管理法に関わることは現状警察か動物愛護センターなのかなと思いますが、特に警察に動いてもらいたいですね。
相手がまずいと思わないと繰り返し起きてしまうので。
どうすれば警察が動くのか、また事例を見つけて記事にしていきますね。
新たに法律で定められたこと
国会でもじわじわと犬猫やペット以外の動物に対しても考えていこうという動きが出てきています。
動物愛護管理法は議員立法という議員発信の法律ですが、その委員会メンバーはものすごく動物たちのことを勉強されていて法律も少しずつですが良い方向に変わってきています。
2020年、畜産動物について動物愛護管理法で変わったこと
(地方公共団体への情報提供等)第四十一条の四 国は、動物の愛護及び管理に関する施策の適切かつ円滑な実施に資するよう、動物愛護管理担当職員の設置、動物愛護管理担当職員に対する動物の愛護及び管理に関する研修の実施、動物の愛護及び管理に関する業務を担当する地方公共団体の部局と畜産、公衆衛生又は福祉に関する業務を担当する地方公共団体の部局、都道府県警察及び民間団体との連携の強化、動物愛護推進員の委嘱及び資質の向上に資する研修の実施、地域における犬、猫等の動物の適切な管理等に関し、地方公共団体に対する情報の提供、技術的な助言その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
文章で見るとややこしいですが、畜産動物についても都道府県警察及び民間団体との連携の強化を努力していきましょうねということ。
家畜保健衛生所職員などは、動物愛護法の指導も行い守られるように伝えていきましょうねということ。
努力ではなくもっと具体的な表現が欲しいものですが、こうやって厳しくなり悲しい出来事を減らせる法整備が必要です。
正直、畜産動物の虐待は多くの人が興味のないことだったかもしれませんが、この動画を見て悲しく思った人がこのままではいけないという気持ちになることで具体的な行動に移り、法律は変えていけます。
(獣医師による通報)第四十一条の二 獣医師は、その業務を行うに当たり、みだりに殺されたと思われる動物の死体又はみだりに傷つけられ、若しくは虐待を受けたと思われる動物を発見したときは、遅滞なく、都道府県知事その他の関係機関に通報しなければならない。
畜産動物は病気の予防やまん延防止、畜産農家の指導や支援など、獣医師と連携していて家畜伝染病予防法という法律によって、各種の届け出や定期的な検査などが義務付けられています。
上の条文を見ると、おかしな怪我や傷があれば獣医師が通報できるはずです。
家畜保健衛生所の獣医師(公務員の立場になるはず)が定期的に訪問するので、怪しいと思った時に通報してくれるかどうか。
殴る蹴るなどのあざはなんとでも言い訳できますし、果たして機能するのか難しいところですがこれがきっかけで変わりますように。
そもそも虐待の事件はどれだけ起きているのか。
全く見えてきません。
虐待と言っても殴る蹴るだけが虐待ではなく、新鮮な水を与えられているのか、身動きの取れない場所にずっと閉じ込められていないかなどいろいろ知りたいことがあります。
法律が変わっても全然守られていない現実
そもそも、どれだけ法律が変わっても、発見されにくいから罰せられにくいという欠点があります。
誰が畜産業者を監視するのか。
監視する費用も税金になります。
どこから財源を出すのか。
ものすごく難しい話ですね。
正直法改正があっても一部の悪徳な業者の行為は変えられないという悲しい現実。
考えれば考えるほど隠蔽する手段はいくらでもあって、こんな虐待が日常茶飯事に行われていたとしても見えてこない真実。
どうすればなくせるのだろうか。
変えるために私達ができること
正直、人間の虐待も畜産動物の虐待もなくならないと思っています。
人間が人間である以上必ず間違いは起こります。
どんな優良な畜産業者であっても一人の人間がとんでもないことをする可能性もあります。
そのとんでもない行為を止められる空気が社内にあるかどうかが一つの鍵でしょう。
動物を大切に扱ってくれる業者から買いたい。
そう思う人が増え、消費者の目が厳しくなることで少しずつ変化が起こるのではないでしょうか。
どうやったらそんな飼育環境までチェックできる?
それを売りにしている企業から買うというのも一つの手段です。
例えば、コープ自然派、オルター、乳製品であればよつ葉乳業など。
100%虐待が起きていないとは証明できるわけもありませんが、飼育環境に力を入れている会社です。
そもそも動物性の食品をちょっとずつ減らすという選択も。
1週間のうち1日、肉を食べない日を作れば1/7の畜産動物が減るわけです。
全体の数が減ることで虐待されたり酷い飼育環境で育てられる数も減ります。
今の日本人、肉を食べ過ぎです。
街中を見ても繁華街は肉の看板ばかり。
減らしましょう。
減らして飼育環境のいい、高い肉を買うという選択も視野に入れてくれる人が増えることを願います。
よかったら美味しいヴィーガン対応カレーを食べてください!
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