猫スペースきぶん屋 猫スペースきぶん屋

犬の目が急に赤く濁って痛がる|急性緑内障は時間の猶予を前提にできない眼科の救急

片方の目が急に真っ赤になり、黒目が青白く濁って、目を細めて痛がっている——この組み合わせは急性緑内障(眼圧が急に上がった状態)を疑う所見で、眼科の救急として扱われます。米国獣医眼科専門医(DACVO)執筆の資料は「急性緑内障は救急とみなされ、視覚を救うため眼圧はできる限り速やかに下げるべきである」と明記しています。

気づいた時点で動物病院に電話してください。そして家にある目薬をさしてはいけません。同じ「赤くて痛そうな目」でも、病名が違えば使う薬が逆になるからです。この記事では、電話の前に確認すること、伝えるべき情報、そして自宅で行ってはいけないことを順にまとめます。

「◯時間までなら間に合う」という前提を持たないでください。専門医執筆の資料は急性緑内障を「眼圧上昇が12〜24時間未満のもの」と定義しており、その時期に治療しても視覚が戻るのは約半数にとどまるとされています。査読レビューは、眼圧の上昇から網膜と視神経の障害へ向かう過程が数分の単位でも起こりうると記載しています。

家にある目薬(人用のもの、以前処方された残り、市販の目薬)を使わないでください。散瞳作用のある点眼はすでに緑内障のある目では避けるべきとされ、ステロイド点眼は角膜潰瘍があると治癒を遅らせて感染を招きます。見た目からはどちらか決められません。

目に触れず、こすらせないようにして、そのまま受診してください。冷やす・温めるといった処置に効果があるという根拠も、安全だという根拠も確認できませんでした。

まず確認すること

動物病院に電話する前に、次の6つを確認してください。すべて分からなくても構いません。分からないこと自体が伝えるべき情報です。

  1. どちらの目か、片眼か両眼か
  2. いつ気づいたかと、それ以前に異変がなかったと確認できた時刻
  3. 濁りの色(青白いのか、白いのか)と、充血の程度
  4. 瞳孔の大きさ(左右で違わないか、開いたままになっていないか)
  5. 痛みのサイン(目を細める、開けられない、まぶしがる、こする、顔を触らせない)
  6. 元気・食欲・睡眠の変化と、物にぶつかる・段差を踏み外すなど視覚の変化

急性期に見えるもの

査読レビュー(Miller & Bentley, 2015)は、急性の閉塞期を「もっとも派手な症状を示し、視覚の維持にとって最大の脅威となる時期」と表現し、視覚の変化がこの時期に急速に起こるとしています。所見として挙げられているのは、著明な上強膜血管の怒張(白目の血管が太く浮き出る)、びまん性の角膜浮腫(黒目全体が青白く曇る)、中間から散大した瞳孔で、片眼の異常でも両眼でまぶたのけいれんが見られるとされています。

コーネル大学獣医学部のRiney Canine Health Centerは、飼い主が気づく所見として、目を細める、涙、真っ赤で膨らんだ目、角膜浮腫による白いもや、散大した瞳孔、視覚の喪失、元気消失、食欲の低下を挙げています。

見えているもの何が起きているか
白目が真っ赤で、血管が太く浮き出て見える上強膜血管の怒張
黒目全体が青白く、すりガラスのように曇るびまん性の角膜浮腫
瞳孔が開いたまま小さくならない、左右差がある中間から散大した瞳孔
目を細める、開けられない、まぶしがるまぶたのけいれん(眼瞼けいれん)=痛みのサイン
元気がない、食欲がない、寝てばかりいる見逃されやすい形で出ている眼の痛み
眼球が大きく・前に出て見える(牛眼)慢性の経過を示す所見。それでも受診が必要

「白く濁ってきたから白内障だろう」と考えないでください。急性緑内障の白っぽさは角膜浮腫による、黒目の表面全体の青白い濁りです。瞳の奥が白くなる白内障とは成り立ちが違います。強い充血、瞳孔の散大、目を細める、元気消失をともなう濁りは、緑内障を疑う所見です。

犬の眼の痛みは「元気がない」という形で出る

犬は「目が痛い」と言いません。査読レビューは、眼圧の上昇が著明な原発閉塞隅角緑内障では、ほとんどの病期で強い痛みが共通の特徴だとしています。そして、慢性的に眼圧が上がった眼を摘出したあとに飼い主の大多数が「ペットがより元気で若々しくなった」と述べることを、犬でも眼圧の上昇が痛みを生んでいることの裏づけとして挙げています。

専門医執筆の資料も、元気消失・食欲低下・睡眠時間の増加は見逃されやすい痛みのサインだと明記しています。「痛がっていないから大丈夫」という判断は成り立ちません。

すぐ動物病院へ相談すべきサイン

次のどれか一つでも当てはまれば、時間を置かずに動物病院へ電話してください。

  • 片目が急に真っ赤になった(白目の血管が太く浮き出て見える)
  • 黒目(角膜)が青白く・すりガラスのように濁ってきた
  • 瞳孔が開いたまま小さくならない、左右の瞳孔の大きさが違う
  • 目を細める、開けられない、まぶしがる、暗いところへ行きたがる
  • 涙が止まらない、目の周りが濡れている
  • 目や顔を前足でこする、床や家具に顔をこすりつける
  • 頭や顔を触られるのを嫌がる、目の周りを触ると怒る
  • 元気がない、食欲がない、寝てばかりいる(犬の眼の痛みは、この形で出ることが多くあります)
  • 物にぶつかる、段差を踏み外す、暗いところで動けない
  • 眼球が大きく・前に出て見える(すでに進行しているサインですが、それでも受診の対象です)
  • すでに片目が緑内障と診断されている犬で、反対の目に同じ症状が出た
  • 上のいずれかがあって、いま夜間・休日である(翌朝まで待たず、まず電話してください)

「何時間で失明するのか」に答えられるか

この病気の記事では「48時間以内に治療しないと失明する」という表現がよく使われます。この記事ではその数字を使いません。査読文献と専門医執筆の資料を確認しましたが、48時間という閾値を示した記載を見つけられなかったためです。

代わりに確認できたのは、次の3つの事実です。いずれも「時間の余裕がある」という方向ではなく、逆の方向を示しています。

  1. 急性緑内障の定義そのものが「眼圧上昇が12〜24時間未満のもの」である(DACVO執筆, Today’s Veterinary Practice 2018)。48時間という枠より、はじめから短い時間で区切られています
  2. その急性期に治療しても、視覚が戻るのは約半数にとどまる。持続的な眼圧上昇の前に、無症状の眼圧のスパイクが起きていることが多く、それが視覚の予後を悪くするためだと説明されています
  3. 眼圧の上昇から網膜と視神経の障害へ向かう過程は、数分の単位でも起こりうる(Miller & Bentley, Vet Clin North Am Small Anim Pract 2015)。そこから緑内障性の変性の悪循環が始まるとされています

さらに、眼圧を下げたあとも視覚が戻るとしても数日から数週間かかることがあり、戻らないこともあるとされています。眼圧の管理に成功しても、その後の数か月から数年で視覚が失われることがきわめて一般的だとも記載されています。「すぐ治療すれば元どおりになる病気」ではありません。

つまり、この病気に対して持つべき前提は「◯時間以内なら間に合う」ではなく、「時間の猶予を前提にできない」です。気づいた時点で電話する、それがこの記事の結論です。

家庭では病名を決められない|だから手元の目薬が危険になる

MSD獣医マニュアルは「緑内障の診断は臨床徴候と正確な眼圧測定(トノメトリー)に依存する」とし、眼球に穿孔がなければ、眼の痛み・角膜浮腫・上強膜の充血があるすべての犬で眼圧を測るべきだとしています。眼圧は見た目では判定できません。

「赤い・濁っている・痛がる」という同じ見え方をする病気には、緑内障のほかに、ぶどう膜炎、角膜潰瘍、前房出血などがあります。家庭でこのどれかを決めることはできません。そして、決められないまま目薬を使うことが、なぜ危険なのか。理由は3つあります。

理由1|瞳孔を開く薬は、緑内障の目では避けるべきとされている

獣医眼科専門医(DACVO)を含む著者による薬理解説は、「すでに緑内障がある患者では、シクロプレジック(アトロピン等の散瞳・毛様体麻痺薬)は避けるべきである」と明記しています。

ところがアトロピンは、ぶどう膜炎や角膜潰瘍の痛みをやわらげるために使われる薬でもあります。つまり同じ「赤くて痛そうな目」に対して、病名が違えば真逆の薬になります。家庭で病名を決められない以上、手元の点眼を使うことは「反対の薬をさす」賭けになります。

理由2|ステロイド点眼は、角膜潰瘍があると使えない

同じ薬理解説は、局所ステロイドは角膜の治癒を遅らせ、角膜を感染しやすくするとし、活動性の角膜潰瘍がある場合は感染のリスクのため避けなければならないとしています。

人用の目薬や以前もらった目薬には、ステロイドや血管収縮薬が入っていることがあります。角膜に傷があった場合、ステロイドは悪化させる方向に働きます。血管収縮薬は充血を一時的に隠すため、受診の判断を遅らせる方向にも働きます。

理由3|緑内障の治療薬でさえ、検査なしには選べない

緑内障の治療に使われるプロスタグランジン製剤について、専門医執筆の資料は前部水晶体脱臼や重度のぶどう膜炎に続発した緑内障では避けるべきとしています。MSD獣医マニュアルも、「強い縮瞳が前方に脱臼した水晶体を閉じ込め、眼圧をさらに上げうるため、投与前に水晶体の位置を評価することが極めて重要である」と述べています。

獣医師でさえ、眼圧測定と角膜の染色検査、水晶体の位置の確認をしないと薬を選べません。家庭にある目薬でこの判断を代われるはずがない、というのがこの節の要点です。すでにさしてしまった場合は、製品名と時刻を必ず病院に伝えてください。

今、自宅でできること

ここに書くのは治療ではありません。病院に着くまでに、これ以上悪くしないことと、診察に必要な情報をそろえることが目的です。

  1. 動物病院に電話する。「片目が急に赤く濁って痛がっている、眼圧を測ってほしい」と伝えてください。眼圧計がある病院かどうかで対応が変わるため、先に確認できます
  2. かかりつけが閉まっていれば、夜間・救急動物病院に電話する。獣医眼科に対応できる病院を紹介してもらえることもあります
  3. 症状に気づいた時刻を記録する(何時ごろ、どちらの目、どんな様子だったか)
  4. 正面と横からの写真、短い動画を撮る。フラッシュは使わないでください。左右を比べられるように両目を撮っておくと役立ちます
  5. 目をこすらせない。エリザベスカラーがあれば装着する
  6. 照明を落とした静かな場所で安静にさせる
  7. 現在使っている目薬・飲み薬があれば、現物を持参する
  8. 過去の眼科検査の結果や、反対の目の治療歴が分かる書類があれば持参する
  9. 移動中は目に物が当たらないようにし、首輪で強く引かずハーネスやキャリーを使う
  10. 犬種(日本では柴犬・シーズーなどで原発緑内障が目立ちます)と年齢を伝えられるようにしておく

やってはいけないこと

以下は犬を危険にさらすか、受診を遅らせる行為です。ひとつも行わないでください。

  • 市販の目薬・人間用の目薬・以前もらった残りの目薬をさす。散瞳作用のある点眼は緑内障のある目では避けるべきとされ、ステロイド点眼は角膜潰瘍があると使ってはいけません。病名が違えば逆の薬になります
  • 目を洗う、こする、押す、指で触る。痛みが強く、角膜に傷がある可能性もあります
  • 冷やす・温めるなどの自己処置をする。有効だという根拠を確認できず、しかも「これで様子を見る」時間を作ってしまいます。眼圧は冷やしても下がりません
  • 人用の鎮痛薬(NSAIDsなど)を与える。犬では危険な薬が多く、獣医師の指示なしに使ってはいけません
  • 「白内障だろう」「結膜炎だろう」と自己判断して、翌朝まで先延ばしにする
  • 首輪を強く引く、目の周りを圧迫する
  • 目やにや濁りをガーゼなどでこすり取ろうとする
  • 痛がって攻撃的になっている犬の顔を、無理に押さえて観察しようとする(人がかまれる危険があります)
  • 「見えていないようだから、もう手遅れだ」と受診をやめる。視覚が戻らない場合でも痛みは残るため、痛みを取る治療の対象になります

動物病院へ伝える情報

  • 症状に気づいた正確な時刻と、それ以前に異変がなかったと確認できた時刻
  • どちらの目か、片眼か両眼か
  • 濁りの色(青白い/白い)、充血の程度、瞳孔の大きさの左右差
  • 目を細める・こする・まぶしがるといった痛みのサインの有無
  • 元気・食欲・睡眠時間の変化(眼の痛みは全身の元気消失として出ることが多くあります)
  • 物にぶつかる、段差を踏み外すなど、視覚の障害を疑う行動の有無
  • 犬種・年齢・体重
  • 過去の眼科疾患(白内障、ぶどう膜炎、水晶体脱臼、外傷)の有無と治療内容
  • 反対の目がすでに緑内障と診断されているか、予防的な点眼をしているか
  • 現在使用中のすべての目薬・内服薬・サプリメント(現物を持参)
  • 最近の頭部・眼部の打撲や事故の有無
  • 自宅で目薬をさしてしまった場合は、製品名と時刻を必ず申告する
  • 全身疾患(高血圧、腎疾患、腫瘍など)の治療歴(続発した緑内障との鑑別に必要です)

犬種のこと|日本のデータをどう読むか

日本では、東京大学の動物医療センターで行われた後ろ向き調査(Kato K, Sasaki N ほか, J Vet Med Sci 68(8):853-858, 2006)があります。1999年10月から2004年5月に眼圧測定と隅角検査を含む眼科検査を受けた1,244頭のうち、緑内障と診断されたのは127頭162眼でした。

この論文の数字を「柴犬の17.6%が緑内障になる」と読むのは誤りです。その17.6%は、調査期間中に東京大学の動物医療センターを受診した柴犬238頭を分母にした割合です。大学病院は紹介を受ける二次診療の場なので、一般に飼われている柴犬全体の有病率ではありません。しかも論文自身が「柴犬の緑内障の割合は他犬種よりずっと高かったが、その差は統計学的に有意ではなかった」と明記しています。

  • 緑内障と診断された127頭の犬種別内訳は、柴犬42頭(33%)が最多、次いでシーズー21頭(16.5%)、雑種10頭(7.9%)、アメリカン・コッカー・スパニエル8頭(6.3%)、ビーグルとゴールデン・レトリーバーが各5頭(3.9%)
  • 柴犬の緑内障眼58眼はすべて隅角の異常をともなう原発緑内障で、櫛状靭帯の形成不全がみられた
  • 柴犬の発症年齢は平均8.4±3.1歳(範囲3.1〜14歳)で、42頭のうち16頭が両眼性だった

この記事で書けるのは、「日本の獣医大学の眼科調査で、緑内障と診断された犬のうち33%が柴犬で最多だった」というところまでです。受け止め方としては、「柴犬は候補として頭に置いておくべき犬種のひとつなので、片目の急な充血や濁りを軽く見ない」で十分です。

北米の査読レビューでは、原発閉塞隅角緑内障の好発犬種としてアメリカン/イングリッシュ・コッカー・スパニエル、バセット・ハウンド、ミニチュア/トイ・プードル、グレート・デーン、フラットコーテッド・レトリーバー、チャウ・チャウ、シャー・ペイなどが挙げられています。ただし犬種はあくまで背景情報です。挙がっていない犬種だから安心、ということにはなりません。

反対の目のこと

原発緑内障は両眼性の疾患です。査読レビューは「診断直後に、まだ罹患していない僚眼で予防的治療を開始すべきである」とし、専門医執筆の資料も反対眼の予防的治療を勧めるべきだとしています。コーネル大学も「原発緑内障はふつう片眼から始まるが、いずれもう一方の眼も侵される」と述べています。

片目が緑内障と診断されたら、もう片方の目の予防的な治療について、必ず主治医に確認してください。予防的な治療によって発症を遅らせられることが報告されていますが、その遅延の期間を示した数値は原著を確認できなかったため、この記事では挙げません。使う薬も日本での入手性が異なるため、薬剤名は挙げません。主治医と相談する事柄です。

病院での検査と治療

診察では、眼圧の測定(トノメトリー)が中心になります。MSD獣医マニュアルは、一般に25mmHgを超えると緑内障を疑うとし、急性緑内障の眼圧は40〜60mmHgを超えると記載しています。コーネル大学も、40〜50mmHgを超える眼圧は緊急の治療を要するとしています。

あわせて、角膜の染色検査(傷の有無を見ます)、水晶体の位置の確認、前房の観察、必要に応じて反対の目の隅角の評価などが行われます。治療薬の選択そのものが、これらの結果に左右されます。

治療の目的は、眼圧をできる限り速やかに下げることと、痛みを取ることです。視覚が残っている可能性がある段階か、すでに視覚が失われている段階かで、方針が変わります。視覚が戻らない場合でも、痛みを取る治療の対象であることは変わりません。「見えていないなら診てもらう意味がない」と考えないでください。

なお、白内障との違いや、手術という選択肢そのものについては、この記事の範囲を超えます。落ち着いてから、下に挙げた既存の解説記事のほうを読んでください。この記事は「今この目をどうするか」に絞っています。

夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合

夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。

電話では、「何が起きたか」「いつからか」「犬の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。

電話では「片目が急に赤く濁って痛がっている」「眼圧を測れますか」と伝えてください。眼圧計の有無で対応できる範囲が変わるため、先に確認しておくと移動先を選べます。獣医眼科に対応できる病院を紹介してもらえることもあります。

あわせて読みたい

よくある質問

本当に48時間以内に失明するのですか?

「48時間」という明確な閾値は、査読文献と専門医執筆の資料では確認できませんでした。確認できたのは、専門医執筆の資料が急性緑内障を「眼圧上昇が12〜24時間未満」と定義していること、そしてその時期に治療しても視覚が戻るのは約半数だとしていることです。

査読レビューは、眼圧上昇から網膜・視神経の障害へ向かう過程が数分の単位でも起こりうると記載しています。つまり「48時間までは待てる」のではなく、「時間の余裕を前提にできない」が正しい理解です。気づいた時点で電話してください。

ぶどう膜炎や角膜潰瘍と見分けられますか?

家庭では見分けられません。どれも「赤い・濁る・痛がる」という同じ見え方をします。MSD獣医マニュアルは、緑内障の診断は臨床徴候と正確な眼圧測定に依存するとしています。

眼圧測定と角膜の染色検査を組み合わせないと、獣医師でも薬を選べません。見分けようとして時間を使わず、そのまま連れて行くのが最短の対応です。

家にある目薬をさして様子を見てもいいですか?

いけません。散瞳作用のある点眼(アトロピン等)は、すでに緑内障のある目では避けるべきとされています。ステロイド点眼は、角膜潰瘍があると治癒を遅らせ、感染を招きます。

血管収縮薬の入った目薬は充血を一時的に隠すため、受診の判断を遅らせる方向に働きます。すでにさしてしまった場合は、製品名と時刻を必ず病院に伝えてください。治療の組み立てが変わります。

目を冷やしたほうがいいですか?

冷やすことや温めることの有効性を示した獣医眼科の資料は、確認できませんでした。眼圧は冷やしても下がらないので、意味がないだけでなく、そのぶん受診が遅れます。

目には触れず、こすらせないようにして(エリザベスカラーがあれば装着して)、そのまま病院へ向かってください。

柴犬は緑内障になりやすいと聞きました。本当ですか?

東京大学の動物医療センターの調査(Kato ら, J Vet Med Sci 2006)で、緑内障と診断された犬127頭のうち柴犬が42頭(33%)で最多でした。柴犬の緑内障眼58眼はすべて隅角の異常をともなう原発緑内障で、発症年齢は平均8.4歳、42頭中16頭が両眼性でした。

ただしこれは大学病院を受診した犬の集団のデータで、「柴犬の◯%が緑内障になる」という有病率ではありません。同じ論文は、柴犬の割合は他犬種より高かったものの、その差は統計学的に有意ではなかったと明記しています。「なりやすい犬種のひとつなので、片目の急な充血や濁りを軽く見ない」という受け止め方が適切です。

もう片方の目も治療が必要と言われました。なぜですか?

原発緑内障は両眼性の疾患で、片眼から始まってもいずれもう一方の眼も侵されるとされています。査読レビューは「診断直後に、まだ罹患していない僚眼で予防的治療を開始すべきである」としています。

予防的な治療によって発症を遅らせられることが報告されています。具体的な薬と期間は、日本での入手性や犬の状態によって変わるので、主治医に確認してください。

目が大きくなってきました。痛がっていないので大丈夫ですか?

眼球が大きく見える状態(牛眼)は慢性の経過を示す所見で、一般には視覚が完全に失われていることを意味するとされています。「まだ間に合う初期のサイン」ではなく、「すでに進んでいるサイン」です。

また犬の眼の痛みは「元気がない・食欲がない・よく寝る」という形で出るため、痛がっていないように見えても痛くないとは限りません。眼圧が高い眼を摘出したあと、多くの飼い主が「元気になった」と述べることが報告されています。見えていなくても、痛みを取る治療の対象になります。

夜中です。朝まで待てますか?

待たないでください。急性緑内障は眼科の救急で、眼圧はできる限り速やかに下げるべきだとされています。

眼圧計がある病院かどうかで対応が変わるため、まず電話して確認してください。かかりつけが閉まっていれば、夜間・救急動物病院に連絡してください。

まとめ

  • 片目の急な充血+黒目の青白い濁り+目を細める、は急性緑内障を疑う所見。眼科の救急として扱われる
  • 「◯時間以内なら間に合う」という前提を持たない。急性期の定義は眼圧上昇12〜24時間未満で、その時期に治療しても視覚が戻るのは約半数。障害へ向かう過程は数分の単位でも起こりうる
  • 家にある目薬をささない。散瞳薬は緑内障のある目で避けるべきとされ、ステロイドは角膜潰瘍があると使えない。同じ見た目でも病名が違えば逆の薬になる
  • 冷やす・こする・洗うは行わない。効果の根拠がなく、受診を遅らせる。目に触れず、こすらせないようにして受診する
  • 犬の眼の痛みは「元気がない・食欲がない・よく寝る」という形で出る。痛がっていないことは安心の根拠にならない
  • 日本の獣医大学の調査では、緑内障と診断された犬の33%が柴犬で最多だった。ただしこれは受診犬を分母にした割合で、有病率ではない
  • 原発緑内障は両眼性。片目が診断されたら、反対の目の予防的治療について必ず主治医に確認する

参考資料

この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。

コメントは受け付けていません。

特集

Instagram でフォロー